タルムードの知恵に学ぶ、ほんとうの“向き合う力”
■ 序章:あかりの下で探す男

夕方、少し肌寒くなってきたころ。
町の明かりがひとつ、またひとつと灯る時間帯。
古い街角のあかりの下で、ひとりの男が真剣な顔で地面を見つめていました。
しゃがみ込んで、手でそっと土をなぞるように探しています。
眉間にはしわ。何か、大切なものを探しているようです。
通りかかった人が声をかけました。
「どうしました?落とし物ですか?」
男は顔を上げて、ため息混じりにこう答えました。
「ああ、大切な金の指輪を落としたんです。妻との記念のものでして…」
その人は「それは大変だ」と、一緒に探し始めました。
ところが──
あたりをいくら探しても、指輪は見つかりません。
■ 会話:ここで落としたんですか?

しばらくして、男にたずねました。
「ところで、指輪はこの辺で落としたんですか?」
すると男は、少し気まずそうにこう言ったのです。
「いえ……実はあっちの暗い小道で落としたんです。
でもそこは暗くて怖くて……だから明るいここで探してるんですよ」
相手は思わず驚きました。
「えっ!?
それじゃあ、いくら探しても見つかるわけないじゃないですか!」
男は、どこか気まずそうに笑いました。
■ 気づき:人は“探しやすい場所”に逃げてしまう

私たちは時々、見たくない場所・怖い場所・向き合いたくない場所を避けて、
“分かりやすくて探しやすい場所”で問題を探そうとしてしまいます。
- 勉強がうまくいかないとき、ノートのせいにしていない?
- 友達とケンカしたとき、相手だけが悪いと思い込んでいない?
- 自分の苦しさを、外のせいにしてないかな?
けれど、心の中ではうすうす気づいている。
「本当に見なければいけないのは、
“あの暗い道の方”じゃないか?」
■ 本質から目をそらすと、問題は解決しない
「暗い道」とは、
つまり、本当は自分が向き合うべき場所のこと。
- 傷ついた心
- 認めたくない弱さ
- 抱えたままにしている怒りや不安
そこは見にくくて、苦しくて、痛いかもしれない。
でもそこにこそ、落とした“指輪”――
つまり、大切なもの・本当の答えがある。
■ 親子で話し合ってみよう
- 何かうまくいかなかった時、「本当はどこに原因があるか」考えたことありますか?
- 「こっちの方が楽だから」と、別の場所ばかり探していないですか?
- こわいけど、勇気を出して向き合ってみたら、何が見えてくるだろう?
- この話の様に、「探しづらいから探さない」のでは本当に大事なことはいつまで経っても見つからないということです。
- 自分が見たくないもの、聞きたくないものにフタをして見ない・聞かないのではなく
- しっかりと暗い場所(問題の原因)に向き合い解決していきましょう。
- 問題の核は、しっかり暗がりに残り続けているのです。
- そこを解決しない事には何も解決しないということをかんがえましょう。
■ 子どもに伝えたいメッセージ
“答え”は、探しやすい場所にはない。
ほんとうに向き合うべき場所にこそ、落とした「たいせつなもの」がある。怖くても、暗くても。
その場所に一歩、踏み出す勇気が――
「心の指輪」を見つけるカギなんだよ。
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