保育園に入ったとたん、毎月のように熱を出す。お迎えの電話が鳴るたびに、職場に頭を下げて早退する。「保育園に預けなければ、こんなに病気をさせずにすんだのかな」と、自分を責めたことはありませんか。
カナダで1,238人の子どもを8歳まで追いかけた研究に、そんな親の心が少し軽くなる結果があります。小さいころ保育園でたくさん風邪をひいた子は、小学校に入ると、逆に風邪をひきにくくなっていたのです。
先に結論です。
- 2歳半より前から大人数の保育園に通った子は、入学前は風邪も中耳炎も約1.6倍多かった
- ところが小学校では逆転。風邪は約2割、中耳炎は約4割少なかった
- 研究者は「病気をするなら、読み書きを学ぶ小学校より前のほうがいいかもしれない」と話している
どんな研究?
- だれが:カナダ・モントリオール大学などの研究チーム(2010年、アメリカの小児科の専門誌で発表)
- だれを:カナダ・ケベック州で生まれた子ども1,238人
- どうやって:生後5か月から8歳まで毎年、母親に「風邪・中耳炎・おなかの風邪にどのくらいかかったか」を聞き、保育園に通った時期や人数の多さとくらべた
わかったこと|入学前と入学後で「逆転」した
2歳半より前から大人数の保育園に通っていた子を、家庭で育った子とくらべた結果です。
| 入学前(未就学のころ) | 小学校(6〜8歳) | |
|---|---|---|
| 風邪などの呼吸器の感染症 | 約1.6倍多い | 約2割少ない(0.79倍) |
| 中耳炎 | 約1.6倍多い | 約4割少ない(0.57倍) |
| おなかの風邪(胃腸炎) | はっきりしたちがいはなかった | |
保育園に通った子は、小さいころにたくさん病気をしたぶん、小学校ではほかの子より病気をしにくくなっていたのです。
なんで? 体が「ウイルスを覚える」から
カギになるのは、体を守るしくみ「免疫(めんえき)」です。
風邪のもとになるウイルスは、何百種類もあります。一度かかったウイルスのことを、体はある程度覚えておくことができます。次に同じウイルスが入ってきたときは、早く追い出せるので、かかりにくくなったり、軽くすんだりします。
たくさんの子どもが集まる保育園では、いろいろなウイルスに出会います。熱を出すたびに、体はウイルスを1つずつ覚えていく。小学校に入るころには「もう知っているウイルス」が増えていて、かかりにくくなる。そう考えると、この結果に納得がいきます。
研究をまとめたシルヴァナ・コテ教授は、「病気をするなら、読み書きを学び始める大事な時期に学校を休むより、その前のほうがいいかもしれない」と話しています。
保育園で熱ばかり……は、ムダじゃなかった
入園した年、毎月のように呼び出され、有給休暇があっという間になくなる。看病で夜も眠れず、職場には肩身がせまい。働きながら保育園に預けていると、多くの家庭が通る道です。
そのたびに「預けたせいで……」と思ってしまうかもしれません。でもこの研究は、あの大変だった時期が、子どもの体を育てる時間でもあったことを教えてくれます。保育園に預けたことを、責める必要はありません。
そもそも、小さい子が年に何度も風邪をひくのはふつうのことです。アメリカ小児科学会は、幼い子どもは1年に6〜8回ほど風邪をひくのが一般的だとしています。
ただし、知っておきたい注意点
- カナダの研究がひとつ:日本でも同じ結果になるかは、たしかめられていません
- お母さんの記憶をもとにした数字:「この3か月で何回かかったか」を思い出して答えてもらっているので、ずれがある可能性があります
- 「わざと病気にかかったほうがいい」という意味ではない:予防接種や手洗いなど、防げる病気はこれまでどおり防ぎましょう
今まさに「熱で呼び出し」が続いている人へ
研究の結果を知っても、明日の呼び出しがなくなるわけではありません。今がしんどいときは、使える制度や段取りを知っておくと少しラクになります。
- 何日休む? 登園の目安や職場への連絡の例文は子どもの発熱で仕事を休むとき
- 有給とは別に使える休みは学級閉鎖で仕事を休めない…「子の看護等休暇」が使えます
ママ友に話すなら、この一言
「保育園で熱ばっかり出してた子って、小学校に入ると逆に風邪をひきにくくなるんだって。カナダで1,000人以上を8歳まで調べた研究があるらしいよ」
入園したばかりで呼び出し続きのママに伝えたら、きっと少し救われるはずです。
まとめ
- カナダで子ども1,238人を8歳まで追った研究
- 小さいころから保育園に通った子は、入学前は風邪や中耳炎が約1.6倍多かった
- でも小学校では風邪が約2割、中耳炎が約4割少なかった
- 理由は、体がウイルスを覚えていく「免疫」のしくみと考えられている
- 保育園に預けたことを、責めなくていい
何度も熱を出して、そのたびに看病して、仕事を調整してきた日々。それは、子どもの体が強くなっていく時間を、いちばん近くで支えてきた日々でもあります。
※参考:Côtéほか(2010)「保育施設の利用と子どもの感染症」アメリカの小児科専門誌『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』、アメリカ小児科学会(HealthyChildren.org)。子どもの体調について心配なことは、かかりつけ医に相談してください。

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