学校の視力検査の紙に「B」や「C」がついて帰ってきた。タブレットの宿題に、寝る前の読書、休日は動画。「このまま目が悪くなっていくのかな」と心配になりますよね。
じつは、子どもの視力低下に「国ぐるみ」で取り組み、増え続けていた視力低下を止めた国があります。お隣の台湾です。台湾が始めたのは、「毎日120分、外で過ごす」という、拍子抜けするほどシンプルな方法でした。
先に結論です。
- 台湾では、小学生の視力低下が10年で約35%から50%まで増えていた
- 2010年から学校で「毎日120分の外遊び」を進めたところ、増え続けていた視力低下が減り始めた
- 大事なのは運動ではなく「外の明るい光を浴びる時間」。日本の家庭でもまねできる
日本の小学生、3人に1人以上が「1.0未満」
まず日本の今を見てみましょう。埼玉県が発表した2024年度の学校保健の調査では、裸眼視力が1.0未満の小学生は35.7%。3人に1人以上です。
| 学年 | 裸眼視力1.0未満の割合 |
|---|---|
| 小学1年生(6歳) | 24.7%(約4人に1人) |
| 小学6年生(11歳) | 46.9%(約2人に1人) |
| 小学生全体 | 35.7% |
入学したときは4人に1人だったのが、卒業するころには2人に1人。小学校の6年間で、ぐんと増えていることがわかります。
台湾が始めた「天天120(ティエンティエン120)」
台湾も、かつては同じ悩みを抱えていました。小学生で視力が下がっている子の割合は、2001年の34.8%から、2011年には50.0%まで増えていました。
そこで台湾の教育当局は2010年、「天天120」という取り組みを始めます。「天天」は中国語で「毎日」。学校で子どもたちを毎日合計120分、外に連れ出そうという呼びかけです。休み時間は教室にいないで外へ、体育や行事もできるだけ外で。
結果:増え続けていた視力低下が、減り始めた
| 年 | 小学生の視力低下の割合 |
|---|---|
| 2001年 | 34.8% |
| 2011年 | 50.0%(ピーク) |
| 2012年 | 49.4% |
| 2015年 | 46.1% |
取り組みの前は毎年1.6ポイントずつ増えていたのが、取り組みのあとは毎年2.3ポイントずつ減る流れに変わりました。毎年120万〜190万人の小学生のデータを使った、大規模な分析です(2020年発表)。
中国の広州でも、学校の授業に毎日40分の屋外の時間を足した実験で、3年間に近視になった子が39.5%から30.4%に減ったという結果が出ています(2015年、アメリカ医師会誌)。
なんで? 外にいるだけで目にいいの?
ポイントは、外の光の明るさです。晴れた日の屋外は、明るい室内の何十倍も明るく、くもりの日や木陰でも、室内よりずっと明るいのです。
子どもの近視の多くは、目の奥行きが伸びすぎることで起こります。明るい光を浴びると、目の中でこの伸びをおさえる物質が出やすくなる、という説が有力です。だから大事なのは、走り回ることよりも「明るい外にいる時間」そのもの。ベンチに座っていても、砂場で遊んでいても、外ならOKなのです。
もうひとつの理由は、外では遠くを見ることが増えること。室内でタブレットや本をずっと近くで見続けるのとは、目の使い方がまったくちがいます。
共働き家庭でもできる「わが家の120分」
「毎日2時間も外遊びに付き合えない」と思いますよね。でも、120分は1日の合計です。親がつきっきりでなくても、すき間を積み上げれば届きます。
- 登下校と、学校の休み時間:「休み時間は外で遊んでおいで」と声をかけるだけで、平日の大きな部分をかせげます
- 学童・園の外遊び:外で遊ぶ時間があるかを、先生に聞いてみるのもひとつです
- 休日は「午前中に一度外へ」:公園、買い物は歩いて、ベランダで朝ごはん。運動でなくてかまいません
- 本や宿題は窓ぎわで:外ほどではありませんが、明るい場所で読むほうが目にやさしくなります
夏の暑い日は熱中症に、日差しの強い日は日焼けに気をつけてください。帽子をかぶって日陰にいても、外の明るさは十分あります。
すでに視力が下がっている場合は、外遊びだけで元に戻るわけではありません。学校の検査で受診をすすめられたら、まず眼科へ。検査の見方と家庭でできる工夫は子どもの視力低下|学校のA〜D判定の見方と、家庭でできる進行の抑え方にまとめています。
子どもに話すなら、この一言
「目はね、外の明るい光を浴びると悪くなりにくいんだって。台湾では、学校のみんなが毎日2時間外で過ごして、目が悪くなる子が減ったんだよ」
「ゲームやめなさい」より、「外で目を元気にしておいで」のほうが、子どもも動きやすいかもしれません。
まとめ
- 日本の小学生の3人に1人以上が裸眼視力1.0未満。小6では約2人に1人
- 台湾は2010年から「毎日120分の外遊び」を進め、増え続けていた視力低下が減り始めた
- 大事なのは運動ではなく、明るい外にいる時間。日陰や座っていてもOK
- 120分は1日の合計。登下校・休み時間・休日の午前中で積み上げる
タブレットも読書も、今の子どもにとっては欠かせないもの。取り上げるのではなく、外にいる時間を少し足す。それなら、明日からでも始められます。
※参考:Wuほか(2020)台湾の「天天120」と小学生の視力の変化(オーストラリア国立大学ほか)、Heほか(2015)中国・広州の学校での屋外活動の実験(アメリカ医師会誌)、埼玉県「令和6年度学校保健統計調査の結果」(2025年3月)。台湾の分析は比較のグループがない調査で、取り組みとの関係を示すものです。目の症状については眼科医に相談してください。
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