テストで100点を取ってきた子に「すごい!頭いいね!」。うれしくて、つい口から出てしまいますよね。子どもを喜ばせたい、自信をつけてあげたい。その気持ちは、親ならだれでも同じです。
ところが、この「頭がいいね」が、子どもを挑戦しない子にしてしまうかもしれない。そんな実験があります。
先に結論です。
- 「頭がいいね」とほめられた子は、むずかしい問題を避け、失敗すると点数をごまかす子が増えた
- 「がんばったね」とほめられた子は、むずかしい問題に挑戦し、失敗してもやる気が続いた
- ほめるなら「才能」ではなく「やり方」。言い方を少し変えるだけでいい
どんな実験?
アメリカ・コロンビア大学のキャロル・ドゥエック博士たちが、小学5年生(10〜12歳)を対象に行った実験です(1998年)。
- 子どもたちに図形のパズルを解いてもらい、全員に「8割以上できたよ」と伝える
- そのあと、ほめ方だけを変える
Aグループ:「頭がいいんだね」
Bグループ:「がんばったんだね」 - 次の問題を選ばせたり、わざとむずかしい問題を出したりして、子どもの反応を見る
ちがうのは、ほめ言葉のたった一言だけです。
結果:一言でこんなにちがった
| 「頭がいいね」の子 | 「がんばったね」の子 | |
|---|---|---|
| 次に選んだ問題 | 67%が「かしこく見える、かんたんな問題」 | 92%が「新しいことが学べる問題」 |
| むずかしい問題で失敗したあと | 楽しくなくなり、あきらめが早く、成績も下がった | 楽しさが続き、成績も伸びた |
| 知らない子に点数を報告するとき | 38%が点数を多くごまかした | ごまかしたのは13% |
自信をつけるつもりの「頭がいいね」で、子どもは挑戦をこわがり、失敗を隠すようになったのです。
なぜ「頭がいいね」が逆効果になるの?
「頭がいい」は、生まれつきで変えられないもののように聞こえます。そうほめられた子は、こう考えるようになります。
- できた = 頭がいい
- できなかった = 頭が悪いのがバレる
だから、失敗しそうな問題は避けたくなるし、失敗したら隠したくなるのです。
一方「がんばった」は、自分で変えられるものです。失敗しても「やり方を変えればいい」「もっと練習すればいい」と思えるので、次の一歩が出やすくなります。
わが家で使える「ほめ方の言いかえ」
| 場面 | つい言いがち | 言いかえると |
|---|---|---|
| テストで100点 | 頭いいね! | 毎日漢字の練習してたもんね |
| 絵が上手にかけた | 天才! | 空の色、いろんな青を使ったんだね |
| 逆上がりができた | 運動神経いいね | 何回も練習したから、できたね |
| すぐに問題が解けた | さすが! | かんたんだったね。次はもう少しむずかしいのにしてみる? |
| テストの点が悪かった | 苦手なんだね | どこでつまずいたか、一緒に見てみよう |
コツは、「何をしたから、できたのか」を具体的に言うこと。子どもは「自分のどこを見てくれたか」がわかると、次もそこをがんばろうとします。
年長さんと小学生では
- 年長さん:「最後まで自分でできたね」「ここ、くふうしたね」と、がんばった場面をそのまま言葉にする
- 小学生:「どうやって解いたの?」とやり方を聞く。説明できたこと自体をほめる
ただし「がんばったね」だけでもダメ
ここが意外な落とし穴です。実験をしたドゥエック博士自身が、のちに「努力ばかりを強調しすぎた」と話しています。
うまくいっていないのに「がんばったね」「もっとがんばろう」だけをくり返すと、子どもは「がんばってもできない自分はだめだ」と感じてしまいます。大事なのは、がんばりと一緒に「次はどうやってみる?」と作戦を考えることです。
博士がすすめているのが、「まだ」という言葉です。「できない」ではなく「まだできない」。この一言で、できないことが「今はまだ途中」に変わります。
まとめ
- 「頭がいいね」とほめられた子は、かんたんな問題を選び、失敗すると点数をごまかしやすくなった
- 理由は、「頭のよさ」は変えられないものに聞こえ、失敗がこわくなるから
- ほめるなら「何をしたから、できたのか」を具体的に
- うまくいかないときは、がんばりに「次の作戦」と「まだ」を添える
「頭いいね」と言ってしまっても、大丈夫です。それだけで子どもがだめになるわけではありません。今日からひとつだけ、「どうやったの?」と聞いてみる。それだけで、子どもの目がきっと少し輝きます。
ほかにも、子どもの心のふしぎがわかる実験を紹介しています。ピグマリオン効果とは?「期待すると子どもは伸びる」実験、マシュマロ実験の意外なその後もあわせてどうぞ。
※参考:Mueller・Dweck(1998)「知能をほめることは子どものやる気と成績を損なう」人格社会心理学誌/Dweck(2007)「ほめ言葉の危険と可能性」教育リーダーシップ誌/ドゥエック博士の2015年の発言に関する報道(エデュケーション・ウィーク誌への寄稿など)。表の数字は、同じ論文にある複数の実験の結果です。実験は小学5年生を対象にしたもので、すべての子に同じ結果が出るとは限りません。
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