何度言ってもやらない子ども|「聞いていない」のではなく「届いていない」5つの理由と伝わる声かけ【年長〜小学生】

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「早く着替えて」「宿題は?」「お風呂入ってって言ったよね」。朝も夜も、同じ言葉を何度もくり返していませんか。

1回目はふつうに言えても、3回目には声が大きくなり、5回目には怒鳴ってしまう。子どもが寝たあとで「また怒っちゃった」「私の言い方が悪いのかな」「このまま大きくなって大丈夫かな」と考えてしまう。

この記事は、そんな毎日に疲れている親に向けて、「何度言ってもやらない」の正体と、言う回数そのものを減らす方法をまとめました。年長さんから小学生を想定しています。

結論から言うと、次の3つです。

  • 何度言ってもやらない理由のほとんどは、わざと無視しているのではなく、言葉が「届いていない」こと
  • 届かない理由は5つのタイプに分かれ、タイプによって効く方法がまったく違う
  • 「もっと強く言う」はどのタイプにも効きにくい。言い方より「言う前の準備」を変えるほうが早い
  1. 「何度言ってもやらない」のは、親や子どもの性格のせい?
    1. 「実行機能」とは?
    2. 大人には1つの動作でも、子どもには4つの関門
  2. やらない理由は5タイプ|☐チェックで見分けよう
    1. タイプ① 聞こえていない(夢中で耳に入っていない)
    2. タイプ② 覚えていられない(途中で抜け落ちる)
    3. タイプ③ 切り替えられない(やめどきがつかめない)
    4. タイプ④ やり方・ゴールがわからない
    5. タイプ⑤ わかっているけど、やりたくない
    6. チェックがいちばん多かったタイプから試す
  3. タイプ別|「何度も言う」を減らす声かけ
    1. ① 聞こえていない子には「そばで・1回だけ」
    2. ② 覚えていられない子には「1回に1つ」と見える化
    3. ③ 切り替えられない子には「予告」と「区切り」
    4. ④ ゴールがわからない子には「ちゃんと」を分解する
    5. ⑤ やりたくない子には「命令」を「相談」に変える
  4. 場面別|朝・帰宅後・寝る前のつまずきポイント
  5. 年長と小3では「届かない理由」が変わる
  6. 「何度も言う」をやめるための3つのしくみ
  7. それでも動かないとき|よくある3つの悩み
    1. Q1. 怒鳴らないと動かないのですが…
    2. Q2. 学校ではちゃんとしているのに、家ではやらないのはなぜ?
    3. Q3. 妹はすぐ動くのに、上の子だけ動かないとつい比べてしまいます
  8. 相談したほうがいいサイン
  9. 何度も言ってしまう自分を、責めなくていい
  10. まとめ|「やらない」ではなく「届いていない」と考える

「何度言ってもやらない」のは、親や子どもの性格のせい?

先に、いちばん大事なことをお伝えします。何度言ってもやらないのは、親の育て方のせいでも、子どもがだらしないからでもありません。多くは、子どもの脳がまだ育っている途中だから起きることです。

「実行機能」とは?

やるべきことを覚えておき、やりたいことをいったん止めて、気持ちを切り替えて動く。この一連の力をまとめて「実行機能」と呼びます。実行機能は、大きく分けて次の3つの力でできています。

力どんな力?弱いと起きること
覚えておく力(ワーキングメモリ)言われたことを頭の中のメモ帳に置いておく力途中で何をするか忘れる
ブレーキの力やりたいことを「今はがまん」と止める力本やゲームをやめられない
切り替える力今していることから、次のことへ気持ちを移す力「あと少し」が何度も続く

この実行機能を担っているのが、おでこの裏あたりにある「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という脳の場所です。前頭前野は脳の中でも育つのがとてもゆっくりで、20代半ばごろまで発達が続くと言われています。年長さんや小学3年生は、まだまだ工事中なのです。

大人には1つの動作でも、子どもには4つの関門

大人にとって「お風呂に入って」と言われて動くのは、ほぼ1つの動作です。でも子どもにとっては、次の4つの関門を順番に越える必要があります。

  1. 聞く:夢中になっている最中に、親の声に気づく
  2. 覚える:何をするのかを覚えておく
  3. 止める:今やっていることをやめる
  4. 動く:やり方がわかっていて、やる気になる

このどこか1つで止まると、親からは「何度言ってもやらない」に見えます。つまり大事なのは「どう怒るか」ではなく、「わが子はどの関門で止まっているか」を知ることです。

やらない理由は5タイプ|☐チェックで見分けよう

最近1〜2週間の様子を思い浮かべて、当てはまるものに印をつけてみてください。

タイプ① 聞こえていない(夢中で耳に入っていない)

  • ☐ 本やテレビ、遊びの最中に呼んでも返事がない
  • ☐ 肩をたたくと「え、なに?」と初めて気づく
  • ☐ 「はーい」と返事はするのに、顔は画面や本を見たまま

タイプ② 覚えていられない(途中で抜け落ちる)

  • ☐ 「着替えて歯みがきして」と言うと、着替えだけして止まる
  • ☐ 物を取りに行ったまま、別のことを始めている
  • ☐ やる気はあるのに「何するんだっけ?」という顔をしている

タイプ③ 切り替えられない(やめどきがつかめない)

  • ☐ 「あと少し」「これだけ」が何度も続く
  • ☐ 急に止められると、泣いたり怒ったりする
  • ☐ 一度始めると、次のことをなかなか始められない

タイプ④ やり方・ゴールがわからない

  • ☐ 「片づけて」と言うと、少し動かしただけで終わりにする
  • ☐ 「ちゃんとして」と言うと、聞き返したり固まったりする
  • ☐ 初めてのことや苦手なことほど動かない

タイプ⑤ わかっているけど、やりたくない

  • ☐ 「わかってる!」「今やろうと思ってたのに」と言い返す
  • ☐ 言われたことと逆のことを、わざとするときがある
  • ☐ 先生や習い事のコーチの言うことは、すんなり聞く

チェックがいちばん多かったタイプから試す

チェックが多いタイプまず試すこと
① 聞こえていないそばに行き、目が合ってから1回だけ言う
② 覚えていられない1回に1つだけ伝える。やることを目に見える形にする
③ 切り替えられない前もって予告し、終わりの区切りを一緒に決める
④ ゴールがわからない「ちゃんと」を具体的な動きに言い換える
⑤ やりたくない命令を減らし、選ばせる・任せる

いくつものタイプに当てはまるのは、ごくふつうのことです。「朝は②と③、帰ってきてからは⑤」のように、時間帯によってタイプが変わることも多くあります。全部を一度に直そうとせず、いちばん困っている場面のタイプから1つ試してみてください。

タイプ別|「何度も言う」を減らす声かけ

① 聞こえていない子には「そばで・1回だけ」

離れた場所から何度も呼ぶ声は、夢中になっている子どもにとっては「遠くで流れている音」と同じです。さらに、毎回だんだん声が大きくなると、子どもは「大きな声になってからが本番」と覚えてしまいます。

❌(キッチンから)「お風呂入ってー! ねえ、聞いてる?」
⭕(そばに行って肩にふれて)「〇〇ちゃん、この章が終わったらお風呂ね」

言ったあとに「なんて言ったか教えて?」と聞き返してもらうと、聞こえたかどうかがはっきりします。本に夢中になりやすい子については、「好きなことしかしない」子は大丈夫?没頭する力と切り替えの育て方でくわしく書いています。

② 覚えていられない子には「1回に1つ」と見える化

子どもの頭の中のメモ帳は、大人よりずっと小さいものです。一度に3つも4つも言うと、最初か最後の1つしか残りません。

❌「着替えて、顔洗って、ハンカチ持って、靴下はいて」
⭕「まず着替えね」→ できたら →「次は顔を洗おう」

毎日同じ流れのことは、絵や文字で「やることカード」にして貼っておくのがおすすめです。親は「次は何だっけ?」と聞くだけになり、口で言う回数がぐっと減ります。子どもにとっても、自分で確かめて動く練習になります。

カードの作り方や「気をつけて」で直らない理由は、忘れ物が多い子への対応も参考にしてください。

③ 切り替えられない子には「予告」と「区切り」

夢中になっているところを急に止められるのは、大人で言えば、ドラマのいちばんいいところでテレビを消されるようなものです。怒ったり泣いたりするのは、わがままというより、気持ちの切り替えが間に合っていないサインです。

❌「もうやめなさい! 今すぐ!」
⭕「あと5分でお風呂だよ。どこまでやったら終わりにする?」

  • 5分前に予告する:いきなりではなく、心の準備の時間をつくる
  • 区切りを子どもと決める:「この章まで」「このレースが終わったら」
  • タイマーを子どもに押してもらう:「ママが止めた」ではなく「タイマーが鳴った」にすると、ぶつかりにくい

ゲームでもめやすい家庭は、子どものゲーム時間のルール|「あと5分」でもめない決め方もあわせてどうぞ。

④ ゴールがわからない子には「ちゃんと」を分解する

「ちゃんと」「早く」「きれいに」は、正解が大人の頭の中にしかない言葉です。子どもは何をすれば合格なのかがわからないので、動けないか、少しだけやって終わりにします。

❌「部屋、ちゃんと片づけて」
⭕「床にある本を、本棚に戻そう」

伝えるときは「何を・どこへ・いつまでに」の3つを入れるとはっきりします。初めてのことや苦手なことは、言葉で説明するより一度いっしょにやって見せるほうが早く伝わります。

大人は「わかっている側」から話すので、相手がわかっていないことに気づきにくいものです。この落とし穴については知識の呪いとは?「何回言えばわかるの」の正体で実験とともに紹介しています。

⑤ やりたくない子には「命令」を「相談」に変える

5〜10歳ごろは、自分の考えが育ってくる時期です。言われた内容よりも、「命令されること」そのものに反発していることがよくあります。これは中間反抗期と呼ばれる、成長の一場面です。

❌「宿題やりなさいって言ってるでしょ!」
⭕「宿題、おやつの前と後、どっちにする?」
⭕「何時から始める? 決まったら教えて」

やることは同じでも、選ぶ権利と決める権利を渡すと、子どもは「自分で決めた」と感じて動きやすくなります。選ばせ方のコツは子どもがイヤイヤ言わなくなる“2択法”にまとめています。

言い返されたときは、言い合いを続けないことも大切です。「じゃあ7時にもう一回だけ声をかけるね」と伝えて、いったん離れましょう。理屈で言い返してくる時期の対応は7歳の反抗期は「理屈」で来るでくわしく書いています。

場面別|朝・帰宅後・寝る前のつまずきポイント

場面起きやすいタイプ効きやすい工夫
朝の支度② 覚えていられない
③ 切り替えられない(テレビ)
やることカード/支度が終わるまでテレビはつけない/服は前の晩に一式そろえる
帰宅後の宿題⑤ やりたくない
(疲れ)
まずおやつと休憩→始める時刻は本人が決める
お風呂・寝る前③ 切り替えられない
① 聞こえていない(本・動画)
5分前の予告/「この章まで」の区切り/お風呂の時刻を毎日同じにする

夕方から夜は、子どもも1日の疲れがたまり、どのタイプも強く出やすい時間です。そして共働きの親にとっても、仕事のあとでいちばん余裕がない時間帯です。親子の疲れが重なる時間に、大事な声かけを詰めこみすぎないことが、実はいちばん効く工夫かもしれません。

朝の「早くして!」については「早くして!」をやめたら、朝が笑顔になった。、夜の流れの整え方は小学生が寝ない!就寝を30分早める5つの方法で紹介しています。

年長と小3では「届かない理由」が変わる

年長(5〜6歳)小学3年生(8〜9歳)
多いタイプ①②③(脳の育ちによる「できない」)⑤(自分の考えによる「やりたくない」)と③(ゲーム・本)
効きやすい方法1つずつ伝える・見せる・いっしょにやる任せる・選ばせる・理由を話す
避けたいこと遠くから何度も呼ぶ人前で注意する・「何回言わせるの」

年長さんは、まだ「できない」が中心です。言葉で何度も言うより、見せる・いっしょにやる・1つずつ渡すほうが伝わります。入学前に身につけておきたい生活の力は小学校入学までにできればいいことチェックリストにまとめています。

小3になると、「わかっているけど、今はやりたくない」が増えてきます。口答えが増えたように感じるのは、自分の考えを言葉にできるようになった成長の印でもあります。この時期は勉強や友達関係も急に難しくなるので、9歳の壁とは?もあわせて読むと、子どもの状態が見えやすくなります。

「何度も言う」をやめるための3つのしくみ

声かけを変えても、気づけばまた何度も言っている。そんなときは、言い方ではなく「しくみ」で回数を減らします。

  1. 言うのは1回。2回目は言葉ではなく行動で
    2回目は同じ言葉をくり返さず、そばに行く・カードを指さす・タイマーを見せる。言葉の回数が減るほど、1回目の言葉が重くなります。
  2. 「終わったら教えて」で、終わりを子どもに渡す
    親が見張り役をやめると、子どもは「自分の仕事」として取り組みやすくなります。
  3. できた瞬間を、ひとことで拾う
    「やっとできたね」ではなく「自分で着替えられたね」。注目してもらえた行動は、くり返されやすくなります。

それでも動かないとき|よくある3つの悩み

Q1. 怒鳴らないと動かないのですが…

「大きな声になってからが本番」と覚えてしまっている可能性があります。ふつうの声で、そばに行って1回だけ言う。動かなければ、声を大きくするのではなく行動で示す。これを続けると、少しずつ「1回目で動く」に戻っていきます。すぐには変わらないので、しばらく続けてみてください。

Q2. 学校ではちゃんとしているのに、家ではやらないのはなぜ?

学校で先生の話を聞き、友達に気をつかい、1日がんばった子ほど、家に帰ると力が抜けます。家でだらっとするのは、家が安心できる場所だからでもあります。学校でできているなら、力はちゃんと育っています。帰ってすぐは大事な声かけを避け、おやつや休憩のあとにするだけでも、届き方が変わります。外ではがんばれている子の見方はマイペースな子ども、このままで大丈夫?で書いています。

Q3. 妹はすぐ動くのに、上の子だけ動かないとつい比べてしまいます

「妹はもうできてるよ」は、タイプ⑤の「やりたくない」を強めてしまう言葉です。きょうだいで動き方が違うのは、性格や年齢で「止まる関門」が違うだけ。たとえば上の子には「任せる」、下の子には「いっしょにやる」と、声かけの種類を分けるほうがうまくいきます。

相談したほうがいいサイン

多くは成長とともに落ち着いていきます。ただ、次のような様子が続くときは、ひとりで抱えずに相談してみてください。

  • ☐ おやつや好きなテレビなど、うれしい声かけにも反応しないことが多い(聞こえの確認のため、小児科や耳鼻科へ)
  • ☐ 家だけでなく園や学校でも指示が通らず、先生から何度も連絡がある
  • ☐ 忘れ物・なくし物・じっとしていられないことが毎日重なり、本人が自信をなくしている
  • ☐ 親のイライラがおさえられず、手が出そうになることがある

相談先は、担任や園の先生、スクールカウンセラー、かかりつけの小児科、市区町村の子育て相談窓口などです。相談すること=何かの診断がつくこと、ではありません。「家でこう困っています」と話すだけで、学校での様子がわかったり、具体的な工夫を教えてもらえたりします。

何度も言ってしまう自分を、責めなくていい

何度も言ってしまうのは、子どもを大事に思って、ちゃんと育てようとしているからです。仕事と家事と育児を回しながら、毎回落ち着いて完ぺきな声かけをするのは、誰にとっても無理なことです。

この記事の方法を全部やる必要はありません。今日は「そばに行って1回だけ言う」、それだけで十分です。うまくいかない日があっても、明日また1つ試せばいいのです。

もし今日、怒りすぎてしまったと感じているなら、つい怒りすぎてしまった…そんな時の心のケアと子どもへのフォローを読んでみてください。

まとめ|「やらない」ではなく「届いていない」と考える

  • 何度言ってもやらないのは、親や子どもの性格ではなく、脳の実行機能が育っている途中だから
  • 止まる関門は「聞く・覚える・止める・動く」のどれか。5タイプを☐チェックで見分ける
  • そばで1回だけ/1回に1つ/予告と区切り/「ちゃんと」の分解/命令を相談に
  • 年長は「できない」、小3は「やりたくない」が中心。年齢で効く方法が変わる
  • 2回目は言葉ではなく行動で。親が全部をがんばらなくていい

同じ言葉を何度も言う毎日は、本当に疲れます。でも、届かない理由がわかれば、言う回数は少しずつ減らせます。まずは今夜、1つだけ試してみてください。

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